講堂
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奈良時代につくられた国宝、講堂。入母屋造の本瓦葺だ。
平城宮の東朝集殿(ひがしちょうしゅうでん)を移築・改造したもので、開放的な空間になっている。天平時代、平城宮の面影をとどめる唯一の建築物としてきわめて貴重な存在。
内部には、本尊弥勒如来坐像(重文、鎌倉時代)と、持国天、増長天立像(重文、奈良時代)の他、多くの仏像が安置されている。
入口付近には、金堂平成大修理の記録があった。千手観音さまを解体し、すべての手をバラして修理し、それをまた元どおりにする、という繊細で綿密な作業。それだけでも気が遠くなるのに。
阪神淡路大震災をきっかけに文化財建造物の耐震性が再認識されていたが、さらに平成10年(1998)には、金堂を含む唐招提寺の伽藍建築が世界文化遺産となった。保存に対する機運が高まり、国宝唐招提寺金堂保存修理事業専門委員会が結成され、2年間に及ぶ建物調査が実施。
調査結果を踏まえて、平成12年(2000)より奈良県教育委員会文化財保存事務所の主導による「金堂平成大修理事業」が始まった。要した年月は10年。
建物を保存するのには、莫大なお金と時間と人手と技術と知恵がかかるのに、戦争で破壊するのは一瞬。自分の国の歴史も、誇るべき伝統文化も、積み重ねられた知恵や技術そのものが破壊されたのを思い知ったのが、「さきの戦争」ではなかったのか。