世代閤(よしろかく)
もうひとつの収蔵庫、平成元年に開館した世代閤には、さらにたくさんのお像や屏風、古文書が並ぶ。壁際にある4面のガラスケースには、お宝がぎっしりずらりと。
ここに展示されている薬師如来(天平時代 重要文化財)は、行基が開いたこの地のお寺・戸岩寺(といわじ)のご本尊だったものだ。がっしりとした体格で、いかにも病気知らずなビジュアルは、さすがお薬師さまである。(下の写真左側)
見逃せないのが、魚籃観音(ぎょらんかんのん)のお像。これ、見たかった!(下の写真右側)
その名のとおり、右手には観音様らしく蓮の花をお持ちだが、左手に魚のはいった籠をさげていらっしゃる。しかもサザエさんの買い物カゴからネギが出るごとく、魚籠からは魚のシッポが見えている。そしてなんと上半身はもろ肌脱いだセミヌードだ! かつての海女さんのようでもあるが、「観音が誘惑してどーする!」と、観音界が炎上しそうな由々しき事態である。魚籃観音さま、攻めの姿勢ハンパなし!
いや、でもしかし「日本霊異記」には、観音様が男の夢の中で誘惑する?話もあったような・・・。
魚を持つ観音様の由来は、中国、唐の時代に、観音さまが、魚をあつかう美女に姿を変えて、法華経をひろめられたという言い伝えによるものだそうだ。もろ肌ぬいだのも、布教に効果的だったから? と、つい下世話な詮索をしてしまった。
その他、世代閣には、薬師如来の守り神である十二神将像(うち三躰は重要文化財)や十社権現、日光・月光菩薩像など、いくつかの貴重なお像や宝物類がおさめられている。
十二神将像は細かで繊細な造りで、干支の十二支それぞれに対応している。どなたがどの干支かは、像の頭部にちゃんと干支をかたどったものが付いているので、一目瞭然だ。自分の干支の大将さまにご贔屓にしていただけるよう、念入りにお参りするといいらしい。
とくに卯年の安底羅大将(あんちらたいしょう)は、本体は「いかつい」のに、幼稚園児のお遊戯のときにかぶるような兎面がキュートで、そのアンバランスが面白い。「あんちら」というお名前も、「ちんちら」「あんごら」などの兎の名前にも似ていて興味深い(そこ!?)
現在、これら宝物館のある場所は、與志漏(よしろ)神社とよばれる神社の境内で、世代閣という名前もここからきているのだ。