医王寺
どこまで書いたか自分でもわからなくなるくらい間があいてしまい、申し訳ないです。気を取り直して、つづきを。
バスが医王寺の前まで来たところまでだった。木曽路ではないが、医王寺も山の中にある。道からすこしあがったところに、まずは3体のお地蔵さまがお出迎えだ。
ここにおまつりされているのは、国の重要文化財、木像十一面観音立像だ。穏やかな表情で、故・井上靖氏が「乙女の観音」と名付けられたとか。クスノキを使った一木造り。10世紀から11世紀頃にかけての作らしい。
気さくで陽気なお世話係のおじ(い)さんが、フランクに説明をしてくださった。この地には65歳以上の人ばかりだそうだが、彼はそのなかでも、「若者」の部類である。この日にお会いしたお世話係の方々は、みな素朴であたたかい人柄だったが、この方はひときわそうだったかもしれない。
実はこの観音様、もともとこの地にいらっしゃったわけではないのだ。明治の初め、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れる120年前、医王寺の住職が、たまたま古物商でみかけ、この観音様に一目惚れし、購入されたのが最初だとか。彼は身長152センチ(私よりわずかに高い!)で内ぐりのない、重い木像の観音様を、村人とともに、えっちらおっちらとお連れしたそうだ。
世話役さんのすすめで、順次、観音様を間近で拝見する。6月半ばからは、東京芸大の美術館へ出張されるそうなので、タイムリーだった。
お参りをしてから外に出ると、古代めいた石の社のなかに、お地蔵様が。古式ゆかしいかんじが、ちょっと謎めいていてミステリアスだ。
谷川がながれる、山深い場所だ。風もさわやかで心地いい。
ここでみなさん集合して、記念写真を撮ることに。和気あいあいとした賑わいとともに、お世話役さんに写真を撮ってもらう。その後も立ち去るのが、名残惜しい気持ち。
こんな鄙びた山奥の、乙女のような観音様がいらっしゃる地から見えるのは、原発がつくった電気を運ぶ送電線(山の上にあるもの)らしい。苦いアイロニーを覚える。
ちょっとフクザツな気持ちを抱えつつ、バスに戻り次の場所へ。