「松林図屏風」
さて、トリはやっぱり「松林図屏風」なのだった。
日本美術史上の奇蹟の傑作とか、日本画のナンバーワン作品と絶賛されたりとか、噂にはさんざんきいていたので、やっぱりホンモノを見なくてはね、とミーハー心でやってきた今回の展覧会の本命だったのでした。
それに加えて赤瀬川原平さんと美術史家の山下裕二さんの対談、『日本美術応援団』で、
「松林図屏風」は中途半端な下絵で、そのへんにほっぽってあったのを、すごくセンスのある弟子の誰かが等伯の印を押して屏風にしちゃったんじゃないか?という話がでてきたりとか、筆のタッチがすごくアバウトでいいかげんというようなことをおっしゃっていたりしたので、その辺も興味津々だったのだ。
それでこのチャンスに名だたる「松林図屏風」のタッチをじっくりと見てみよう!という、それが事前のメインだったかもしれない。
で、見てみました。
まじかでしげしげ見ると、たしかに筆のタッチは、笑えるほど雑な感じだったのですね。
でも!! それが引いてみたら、ものすごいことになってしまうのですね! まさに、イッツ、マジック!
霧の松林に紛れ込んでしまったような、水墨画の3D体験! 松林を吹き抜ける風の音までもが、聴こえてくるようです。というか、聴こえます(断言)
「松林図屏風」だけじゃなく、いくつかの等伯の絵は、3Dになって人を絵の中に迷い込ませる、魔法の水墨画だ。風を感じたり、静寂の中で音を聴いたり、躍動感のあまりアニメのような動きを感じたり、しみじみとした感情が注入されたり。
ということで、私にとっての等伯は「体験する絵画」という、前例のない展覧会体験になったのでした。
ところで、おまけ。
混み合うミュージアムショップで物色していると、「枯木猿猴図」の手長でふかふかのお猿さんが、なんと「ぬいぐるみ」に!! もう、笑っちゃいました。あのキュートさは、やっぱり絵の中にいるべきものかも。でもあのお猿にはファンが多いと思うので、着眼点は、ちょっといいかもしれない。
私的にはニコニコしている恵比寿さんがニヤニヤしている大黒さんにヒゲを引っ張られている絵の、黒Tシャツが欲しい!と思った唯一のものだったのだけど、品切れ中。残念!!
でも、お財布的にもやや無理だったな。逆に諦めがついて、よかったかもな。