長崎はレンタカーで大冒険ツアーだった。
4泊5日の長崎レンタカーツアーから、Kちゃんが帰宅した。
正確には駅で拾って、家に帰る時間がないからと、私が晩ご飯として作ったサンドイッチを車で食べてから、着替えを持ってそのままバイト先の塾に直行という、若いからできる「弾丸」帰宅だった。
深夜にバイト先から帰ってから、迎えの車の中で「たいへんやったー!!」という話を聞く。ちなみにツアーのメンバーは、高校時代の生徒会メンバーだったので、長い旅行にありがちな諍いもなく、楽しく有意義な旅だったらしい。
ハウステンボスが予想以上によかった、夜景を初めてきれいだと思った、食べ物もおいしく景色もきれいで、旅の内容はパーフェクトだったのだが。
「たいへん」だったのは、レンタカーを申し込んだにも関わらず、三人で順番に運転するはずが、Kちゃんオンリーだったこと。ライセンスを持っている内、一人は「ペーパーなので無理」、ひとりはあまりの運転の危うさに「レンタカーのおっさんにドクターストップかけられた(?)」ためだとか。
というKちゃんも、今回の旅の1週間前から、バックで車庫入れの特訓を行っていたのだ。しかも軽自動車。両側に車が停まっていても、なんとか停められるまでの腕前(?)になり旅立ったのだが、待っていたのは10人乗りのほぼマイクロバスのようなでかい車だった。しかも側面のバックが運転席からみえないときた。さぞかしレンタカー屋のおっさんはヒヤヒヤものだったろう。
まず長崎は路面電車の街でもあるので、街中の運転もパニックの連続だったらしい。一方通行が頻繁にある京都ですら、運転は難しいもんな。ましてやプラス路面電車って。
長崎からメンバーのひとりの実家にお邪魔し、ご馳走になったりしたらしい。
立派な大寺の住職のご子息である。が、その子のおウチは離島にあるのだ。その10人乗りで、大橋を渡って行った。
えてしてそういう橋は、スピードを出しすぎてしまうらしいが、制限速度は50キロ。後続車はなんとパトカー。メーターを見ながら、きっちり50キロで走っていたら、ぴたっと後ろにつかれてしまったらしい。「警察のくせにヤカラかましよるねん!」と憤慨するKちゃん。
別の日には、高速を通り過ぎてしまい、目的地からどんどん遠ざかってしまった、という失態をやらかし、同時にナビにも見放されたらしい。
「ナビが沈黙しよったねん」。 そういうときにこそ、ナビが必要では?
はたまたナビの指示通りに運転していたら、「まさかの行き止まり」に遭遇し、500メートルほどバックしたとか。「ナビは何をしてくれるねん! 嫌がらせかいっ!」。
他にも、信楽の「MIHOミュージアム」への山道ばりに、街灯の無い蛇行する細い道を夜間走行したとか、急傾斜の駐車場への道で、一足違いに満車になったとか、冷や汗物の珍道中ネタには、枚挙にいとまが無いくらい。
そんな彼らの事情を見透かすかのようにレンタカーを返却したときには、貸出しのときのおっさんが、目を光らせて入念に車をチェックしたので、Kちゃんは「このキズはもとからあったものですから〜。ほら紙にも書いてましたから〜」と防御に余念がなかったとか。
ということで新幹線に乗り込むと同時に、Kちゃんは安堵のあまり爆睡した。乗り物で寝ることがめったにない人であるにも関わらずだ。それはたいへんご苦労様だった。
ということで、軽自動車をバックで車庫入れするのがやっとだった娘は、5日間で「どんな車でも運転したる!」と豪語している。高いハードルをクリアすることが、上達の近道なのだと知る母であった。