『そんなはずない』
先日、幼稚園/小学校PTAの読書会とそのOB(いや全員女子なのでOGというべきなのか?)読書会、つまりヤングママの会と還暦を過ぎた方々の(いえ、訂正。一部は除きます)、合同読書会がつつましく行われた。
私はなぜか両方の読書会に籍があるので、全員と顔見知りである。もっとも最近では、ほぼ幽霊会員ではあるが。
テキストは朝倉かすみさんの『そんなはずない』。新感覚の面白さと、行間の濃密さと、会話のテンポのよさと、五感を駆使したドンピシャな表現力と、女の日常感覚目線が素晴らしい。
その場その場での状況に流されてしまうヒロイン、鳩子さん。本命の好きな男がいるのに、過去の男である「様子のいい」男に出会ってしまうと、べつに思いが残っている訳じゃないのに寝てしまったりしちゃうのだ。
しかも、そんな自分にあんまり悩んだりしないのが、他の小説と違うなあ〜と感嘆してしまう。どうということないのだ、彼女にとっては。あ〜あ、つまんないことしちゃった、くらいのことはたぶん思うんだけど。
それは「倫理観なんてぶっとばせ!」と世間に反発しているのではなく、かといって偽悪に走っている訳でもない。ごくフツーに「場当たり的に生きている」だけなのだ。誰だって、それほど正しく、難しいことを考えながら生きているわけじゃない。だから鳩子さんを責めたり、批判したりすることに意味はないように思う。
というタイプの小説なのかもしれない。
結構大胆なことをしているのに、なんだかフツーなのである。鳩子さんは堅実な人生を歩みたいと地元の信用金庫に勤めて、堅実な職業の男を捕まえて、結婚しようという打算づくしで人生を歩もうとする。しかも男の前では、しなしなと女を演じている、正真正銘「嫌な女」として鳩子さんは登場するのだ。けれどもなぜか、読んでいるうちに、リアルなひとりの女性として身近で見続けていると、ほとんど友達のように思ってしまうのですよね。彼女が物語の冒頭から男も職も失ってしまうので、よけいに。
たぶん私が一番好きなのは、性が日常の中にある普通のこととして描かれているところなんだ。すごい特殊なことでなくって。これってものすごく大事なところだと思っていたけど、この部分で共感できる小説が読める日がくるとは、ちょっと感無量。だって誰もそんなこと思ってないみたいだもん。
好きなオトコとコトに及べるのがうれしくて、二人で笑いながら真新しいシーツの袋を破いて、広げて敷いたりするところとか、すごい好きなシーン。しかもスーパーでシーツを買って来たのはオトコの方なのだ。うん、すごくいいな。その場所はもちろんホテルなんかじゃなく、オトコの部屋だ。そうでなくちゃ。
クリスマスにはホテルでディナーしてお泊まり、というのはもう古い。オトコの部屋に上がり込んで、二人で料理の準備をして、たとえば二人鍋なんかをつついて、なんとなく布団に転がり込んで、みたいなのが素敵だ、という時代に、もしかして、なってきているのかな? だったら、日本の未来は明るいんだろうな、きっと。