佐川美術館へ
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H氏に佐川美術館へ連れて行ってもらう。「安野光雅展 ーあんのさんのしごとー」が開催中で、チケットもいただいたのがあったので、軽い気持ちでのおでかけだった。つまり、絶対見なくちゃ!という固い意思ではなかったのだ。
『ふしぎなえ』をはじめとする(安野さんにいわせると)トポロジー的な、エッシャーみたいな絵から始まり、森の絵に動物が隠れているなぞなぞみたいな絵、『旅の絵本(日本編)』の原画、ヨーロッパの風景の水彩やデッサン、野の花や本の装丁画など。
ものすごく熱心に見たのは、明治、大正の有名作家の本の表紙絵。「ちくま日本文学」の装丁らしい。
幸田露伴の五重塔は素敵だった。五重塔自体が、いつも見とれるものすごいシロモノだからな。ほんとは違う門を描いた芥川龍之介の『羅生門』もイメージ通り。宮沢賢治はメルヘンぽいけど、結構ブラックな話を絵にしてある。
素敵なのは太宰治の秋の田舎に続く単線のカーブする線路。太宰治を読んでる時のテイストを思い出してしまうくらい、ピッタリきた。
永井荷風のアメリカの納屋みたいなのもいいなあ。
夢野久作のは黒地にダイヤの白ヌキがあり、その白ヌキの中に、三角帽子の顔、顔、顔。一見、かわいい絵なので「え?夢野久作?」と思ったのだが、「合わせ鏡」をイメージしたそうで、なるほどなあ、だった。江戸川乱歩といえば「人間椅子」。でもこの椅子に人間が入るのはムリそうな気も。背もたれの「ゴールデンバット」がお茶目。
素敵な装丁ばかりだったが、一等好きなのは尾崎翠の「ふきのとう」。すでに花が咲いて食べられない状態だけど、もしかしたらバラより美しいと安野さんが讃えている。
やっぱり私が安野さんに求めているのは、お茶目な機知や遊び心だったらしい。隠し絵やだまし絵ではなく、きれいな風景画ではなく。『旅の絵本・日本編』には、安野さんの個人的な思い出やお茶目さもあって、たぶんこのシリーズでは一番好きかもしれない。
彼が絵本を描くようになったきっかけが、福音館書店の松井直さんの息子さんと安野さんのお子さんが同級生だったことから知り合いになり、松井さんに「絵本を描きませんか?」と頼まれ、字もなくへんてこで画期的な「ふしぎなえ」ができた、というのもスゴイ話だ。
半分以上は流してみたけど、すごく集中してじっくりみたのもあったから、またもやH氏をずいぶん待たせてしまった。いっつも、ごめん。