名もなく貧しく黄昏れる。
兵主大社の庭園は国指定の名勝である。平安時代に作られた大規模な地泉廻遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)だ。池に中の島を浮かべて出島を作り、護岸(ごがん)の石組みや築山の三尊(さんぞう)石組みなど、造園の妙が感じられる、と滋賀県の観光情報にあった。ちょっとしたものなのである。
ちょっとしたものなので、もちろん入場料がいる。ワンコインとはいえ、入場料を払ってまで見たい!!という人は、そのときにはいなかった。たまたま経済的に困窮している人たちが居合わせただけかもしれない。マリー・アントワネット風にいうなら、「お庭に入れないのなら、見るだけでいいじゃないの」。
という訳で、「貧乏人は覗き見ろ」とばかりに、拝殿まで来た人たちは、皆この板塀のスキマから庭園をタダ見していました↓
ところでこの神社は、琵琶湖の湖西に位置する日吉大社より、白蛇の姿と化した祭神が大亀の甲に乗り、琵琶湖を渡り、鹿に乗り兵主大社へ来られたという伝説も残っているそうだ。だから「鹿と亀のいる神社」という看板がでていたのか。賽銭箱にも六角の亀甲の周りを鹿の角の意匠をほどこした紋があったっけ。
それどころか、亀そのものの像もあった。
うわ! 不機嫌そう! もしくは気難しそう!!
それにしても亀の甲羅や鹿の骨は古代には占いに使われたそうなので、その辺も気になる所。
気を取り直して、亀の像の向こうを見ると、不思議なモニュメントがある。ロケット? ミサイル? なんだろう?
なんと針供養のモニュメントだったのでした。これ、夫婦でちょ〜ウケましたよ〜。ハリ!? そういえば糸を通す穴があるよね・・・。
他にも参道横に大きな四角いゲージがあって、ニワトリが数羽いた。彼らがケンカしたりするのを、H氏は興味深くみていた。神社より動物の方に興味があるのだ。ニワトリの中に1羽、高級な卵を産む烏骨鶏もいたので教えてあげた。あ、オスだったかも?
と黄昏ゆく綾錦の境内を、のんびりまったりと過ごす、やはり黄昏れつつある夫婦ものだったのでした。