同聚院に寄り道
東福寺に向かう。もと来た道に戻り駅前を突っ切って、東福寺の矢印のカンバンを左折する場所の角に、なんと一足はやい桜が満開!!
・・・と思いきや。
ま、同じバラ科サクラ属なら、兄弟姉妹みたいなもんか。
桜はまだだけど、椿はあちこちで咲き誇っていた。椿はいい。花が落ちても苔の上なら、それもまた風情がある。白梅も満開だった。紅梅は蕾のものも。
どんどん歩くと、左手にお寺がある。東福寺の塔頭のひとつ「同聚院」だ。「じゅうまん不動さん」の名で親しまれている。
同聚院は文安元年(1444)に、東福寺第百六十世・文渓元作禅師が、その師の東福寺第百二十九世・琴江令薫禅師を開山に勧請して創建した。
この寺のご本尊である不動明王像は、藤原時代前期の代表的な彫像で、仏師定朝の父・康尚(こうしょう)の数少ない作品として重要文化財に指定されている。火伏の霊験あらたかなお不動さんだ。もともと5体あった仏像の中で、唯一焼け残ったお方なのだから。
というお寺や仏像のあれこれは、あとで復習したときにわかったこと。その日は、人気のまばらなこの寺に、ただ何の気なく入ってみただけだった。
受付のおばさんに「拝観もできますよ」と声をかけられ、勧められるままに、拝観料を払い、お堂の中へ。
薄暗い小さなお堂の中には、像高265センチの日本最大の木造不動明王像がいらっしゃる。天井すれすれの見事にゆれる火炎光背をみて、れんくみさんは「どうやって入れはったんやろ?」と素朴な疑問をつぶやかれていた。ああ、確かに〜! 私には思いもつかない疑問だ。それくらい、天井すれすれで、いっぱいいっぱい。
そうそう、檀ふみさんが東福寺に行く前に、梅原猛さんから「東福寺にいくのなら、絶対みておきなさい」と助言された仏像のひとつが、たしかこの不動明王像だったのでは。
予習しておこうと思って借りた『東福寺』という本に、そんなことが書いてあった。リュックから取り出し見直すと、やはりそうだった。
そんなことは実はほぼ忘れていたのに、無意識に残っていた記憶が私を誘ったのだろうか? なんにせよ、大迫力ながら端正で上品ですべてが美しいお不動さんだったので、ふらふらと迷いこんだのは大正解だった。
外は白梅がきれいで、石のお不動さんもいらっしゃる。
手水舎の屋根は法輪柄のかっこいい瓦だ。
ほのぼのと、ちいさなお寺の境内でくつろいでしまう。こうして私たちが気づかないまま、どんどん時は過ぎ去っていくのであった。